私の子ども時代は、工作少年と虫取り少年の二つがあった。私は、どちらも好きだったが、工作の方が虫取りより勝っていた。
作ったものは、色々である。ゴム動力の模型飛行機、エンジン付きのラジコン飛行機、ラジコン自動車、5球スーパーラジオ、鉱石ラジオ、真空管のアンプ、天体望遠鏡、顕微鏡などである。印象深いのは、鉱石ラジオである。どこにも電源がないのに聞こえることに感動した。そこから、ラジオつくりにのめり込んでいき、結局大学も工学部電子工学科に入学することにつながった。最初は、医学部としたが、血を見るのがイヤで電子機械の方がいいと思って工学部にした。 もう一つ強烈な印象となっているのは、中学時代に友達の家で顕微鏡を見せられたときのことだ。普通の子供用の顕微鏡であったが、庭の水たまりの水を顕微鏡で見ると、その中に小さな無数の生物がいることに驚いた。その後で顕微鏡を自作した。当時は、顕微鏡自作用の小さなレンズがキットで市販されていた。厚紙を丸めて筒をつくり、レンズを取り付けるには、かなり苦労した。のりが乾く前に覗くと、目にしみた。
子ども時代のこのような経験が理系が好きになった要因だと思う。その後は、「数式」へのあこがれが理系好きを強めた。横書きでその中に少しでも数式がある本は、すばらしく見えた。一方、文系好きになった理由は、中学から高校にかけて、漱石好きになったことにつきる。「吾輩は猫である」や「草枕」は、繰り返し読んでほとんど覚えてしまった。
まとめ
理系好きにする方法は、驚きのある工作が一番有効だと思う。天体望遠鏡を自作して、それで土星の輪を見て感動したことや顕微鏡でミドリムシが泳いでいるのを見て強烈な印象を持つことなどが決めてであろう。そして、文系好きにするのは、一人の作家が好きになり、その作家の全集を読むようにすることである。 当塾で夏に「実験工作」を小学生対象に行っているのはこうした理由からである。