私が日本IBMに勤務していたとき、本社ビルは22階建てで六本木の高速道路に面した所にあって、国会議事堂に近かった。 クリスマスイブには、毎年決まった行事を行っていた。この行事のことを時々思い出す。
夜間、ビル全体で、「PAX」の3文字を浮かび上がらせるのだ。どうやるか?それぞれの部屋に、どこのブラインドを開け、どこは閉めておくようにという指示が出される。夕方5時半頃だったと思うが、部屋の照明を全て点けて、一斉に窓のブラインドを指示通りにする。
自分でビルを見たことはない。部屋の中にいたため、そのようにPAXの3文字が浮かび上がったビルを外から見なかったことを今でもちょっと残念に思っている。
この3文字は辞書で調べると、「(the) Pax Romana ローマの支配による平和; 強国による押しつけの平和」とある。また、次の様な説明もある。 【間投詞】 《英口語》として、 (子供の遊びなどで一時中断を要求[宣言]して)タイム,たんま; (子供のけんかで)仲直り.[ラテン語 ‘peace' の意]とある。 というとこの場合は、「truce」と同じ意味である。
クリスマスイブにおこなわれたこの行事は、僕に小さからぬ影響を与えた。僕が勤務していた1970年ごろは、ベトナム戦争が泥沼の状況で続いていたい。そこへビル全体に照明で「平和」とかく。この意味は小さくないと思った。平和が最も重要だ。これに勝る価値はないことを宣言しているがらだ。
僕も小さい提言をしたい。ビルに「PAX」の文字を書くことを。 現在では、ビルの壁に投影する3D・4Dマッピングの技術がある。その方が尚いいかもしれない。