政府高官の「粛々と」という表現に沖縄県知事が「上から目線」だと反発しているそうだ。
政治家の中には「粛々」という言葉が殊更好きで、しばしば使用する人がいて、私も以前から気になっていた。政治や行政の世界以外ではほとんど死語に近く、めったに使うことがないからである。
WEB辞書で「粛々」について調べてみた。
① しずかなさま。ひっそりとしているさま。 「鞭声は-と夜河を過(わた)りぬれば/山陽詩鈔」
② おごそかなさま。 「 -として実行に移す」 「師範学校の方は-として進行を始めた/坊っちゃん 漱石」 漱石も使っていたのか。これには少し驚いた。
また「粛々」については、「粛々と進める」「粛々と対応する」といった場合、日本語大シソーラス(類語検索大辞典、大修館書店)にあるような「冷静、不動、平常心」といったニュアンスを含んで使われているという説明もあった。
沖縄の翁長知事は、粛々と言う言葉に「上から目線」を感じられたがもっともである。その気持ちは、権力を持つ側が、苦境に立たされたときに、反対者を切り捨てて実行するという宣言であるからだ。
聞く側に、反論を許さないという圧力をかける雰囲気を与えるための表現であるから、この語を多用する政治家は要注意である。