ベアテ・シロタ・ゴードンさんが8年前の憲法記念日に名古屋市で行った講演のビデオを見直して書かれた署名記事が、昨日5月4日の中日新聞に掲載された。 当時22歳のベアテさんは、GHQ民政局員として、憲法起草に携わった1人であった。
最近、特に憲法改正論議が盛んであるが、その理由としてしばしば挙げられる理由は、この憲法が「アメリカの押しつけ」であることだ。ベアテさんが講演を行った2005年の時点でも、当時の衆院憲法調査会は5年間の論議を最終報告書にまとめ、戦争放棄を定めた9条を改正する方向性を、同様の理由を挙げて示していたそうだ。
「アメリカの押しつけ」という憲法改正論者の指摘に対してゴードンさんは、次のように応じたとある。
「人がほかの人に何かを押しつけるとき、自分のものよりいいものは押しつけないでしょ。日本の憲法はアメリカの憲法よりすばらしい。世界の憲法の良いところを集めた歴史の英知です。いい憲法であれば、それでいい。誰が書いたかを詮索することは意味がありません」
また、「日本の憲法をモデルにしてほかの国々がそれをまねすればよいと思います」とも言っている。
新聞で「自分の持っているものより良いものを押し付ける人はいない」という部分を読んだときぼくはよく理解できなかった。しばらく考えて、次のような意味だと理解した。「通常は押しつけられたものは自分のものより悪いものが普通だが、日本国憲法に限っては、全く反対で、押しつけた側のアメリカの憲法よりいいものだ。これはめったにないことだ。」 そう理解してぼくは納得した。
また、その講演でゴードンさんは、「当時の国民に圧倒的に喜ばれた」ことを述べている。また、日本は昔から、漢字や都の作り方など、良いものを輸入してきたことも指摘している。
また「押しつけ」といってもGHQ起草の憲法を押し付けられることになった理由があるようだ。実際、46年2月1日、毎日新聞のスクープによって、政府・憲法問題調査会の憲法改正案が明らかになったのだが、これが実質的には旧憲法と同一のものだったからだそうだ。画期的な憲法を自分達で作ることは、無理だったのだ。