4月の新学期ですから、私が皆さんに一番伝えたいことを伝えたいと思います。それは、「読書をしよう」と言うことです。「そんなことなら何度も聞いたよ」と思うでしょう。 しかし、皆さんに一番にいたいことは何かと考えると、やはり読書の勧めなのです。読書には、時期があります。皆さんが中学生なら中学生の時でないと読めない本があります。また、高校生なら高校生の時にぜひ読んでほしいという本があります。あとから、もっと読んでおけばよかったと後悔することは多いのです。本のなかでも特に古典といわれるものを読んでほしいのです。読書は習慣ですから、一度その習慣が出来れば、一生続きます。
定期試験や受験勉強で読書をしたいと思ってもなかなか時間がとれないと思うかも知れません。しかし、毎日の過ごし方を少しだけ計画的にすれば、時間は作ることが出来ます。 また、古典などというと難しいと考えるかも知れません。文字ばかりより、マンガの方が読みやすいと思う人が多いでしょう。しかし、マンガも決して易しくはありません。絵を見て吹き出しを読んで理解することは、かなり難しいことです。ひょっとしたら、文字ばかりの方が理解しやすいとも言えます。
さて、最近、私自身がどんな本を読んでいるかを紹介しましょう。野口悠紀雄の「超説得法」という本が新たに出たことをインターネットで知り、すぐに発注して読みはじめました。たいへん分かりやすく、この本で筆者が言いたいことは説得とは相手の価値基準を変えることであり、「一撃でしとめよ」ということです。ゆっくりじっくりという説得法はあり得ない。周到に準備して、一撃で説得することが大切だと述べています。その説得の例がおもしろいことに、聖書やシェイクスピアから採られているのです。その点がたいへんユニークです。それにしても野口先生の読書量の多さとその幅に広さに驚きます。
この本をほぼ読み終えたとき、車での移動中、ラジオで姜尚中先生とアナウンサーとの対談をやっているのを聞きました。NHKの「100分d e名著」という番組で、姜先生が漱石の「こころ」を取り上げた番組が始まっていることを知りました。さらに、姜先生が「心」という小説を書かれたこともわかりました。ぼくは、帰り道、書店によってその小説を買い、NHKの番組のテキストは別の書店で見つけて入手しました。さっそく家で読み始めました。
漱石の「こころ」をぼくは高校生の頃読んで感激したことをよく覚えています。そのから、漱石は、ぼくにとっては「漱石先生」といつも「先生」をつけて心の中で呼ぶようになりました。 最近はやっているコマーシャルの表現を借りて言いますと、「古典はいつ読むの?」「今でしょ!」この「今」はいつでもよいのです。人生のすべてのステージが「今」と思えばいいでしょう。