入試小論文の自動評価システムというものがあることを始めて知った。アメリカの経営大学院の入試の採点のために開発されたのが最初だそうだ。
ぼくがやっているのは、小論文の添削指導である。もっとも単なる評価ではない。不必要な箇所を削り、適切に書き換えることなど、すなわち添削を行い、さらに適切なアドバイスを与え、模範的な解答例を書く必要がある。だから、小論文の単なる評価は、ぼくがやっている仕事のほんの一部に過ぎない。
評価だけなら、人間が行う小論文の評価とかなり一致する評価をコンピュータで行うことが出来そうだ。実際、人の評価と機械の評価の間には相当大きな正の相関関係があるそうだ。小論文の自動評価システムがあって、実際に使用されかなり一般化しているのに、ぼくは、この評価システムについて知識を持たなかったことを恥ずかしく思った。そうしたパソコンのソフトについての情報に接することがなかったのだ。それともこうしたシステムは、まだ一般的でなく研究課題の段階なのだろうか。
この評価システムについて聞いて、ぼくが思ったことは、コンピュータによる「自動翻訳」ソフトについてである。ぼくも以前いくつかの自動翻訳ソフトを使ってみたことがある。結論的に言えば、そのソフトの価格にかかわらず、まだ自動翻訳ソフトは使えないと感じた。唯一使える使用法があるとすれば、「特許明細書」などの最初の翻訳であろう。しかしその場合でも、機械に最初の翻訳をやらせた上で、あとから人間がきちんと見直し、翻訳し直す必要がある。文芸作品のちゃんとした自動翻訳はまだまだ無理なようだ。小論文の翻訳は無理でも、「評価」だけなら、そのアルゴリズムさえしっかり構築すれば、良い評価システムを構築することはパソコンに向いているように思われる。