今年は、昨年度まで行われていた「特色化選抜」が廃止され、入試が一本になるため、不安に思っている人が多いでしょう。一発勝負というと不安が大きくなることも当然です。誰でも同じだと思います。模擬試験を何度受けても本試験とは別ですから、緊張するのも当然です。
進路指導をする学校や進学塾も今年は、新制度の下、種々の不安を抱えていることは確かです。また実際の受験生に向けてどんな言葉をかけようか私も相当悩みながら考えています。その悩みを経て、中3受験生のみなさんに伝えたいことを以下にまとめてみました。この気持ちは考えてみれば、私の本心なのです。決して進学塾の運営者としての発想ではありません。
入試に合格することは確かに重要です。受かる方が良いに決まっています。しかし、受験の効果を長い一生から考えれば、違ってきます。何かの試験で合格かそれとも不合格かは、その後の考え方や広い意味で人生に大きな影響を及ぼすことは明らかです。不合格がかえってその後の人生に役立つことだってあるのです。小さい例では、私の昔の塾生ですが、彼は第一志望の公立高校に失敗し、「滑り止め」としていたある私立高校に進学しました。その後、彼はリベンジを計りたいと猛勉強を開始し、当塾で3年間がんばりました。そして、相当難関な旧帝大系の国立大学に現役で合格を果たしました。こんな例は少なくないでしょう。リベンジはいくらでもできると言うことです。実際、当学園が運営する「桃李国際高等学院」でも今年はそんな受験生が実際に今受験しています。一種のリベンジだと言うことができます。
もっと大きな例では、こんなこともあります。16歳の時,アインシュタインはチューリッヒのスイス連邦工科大学を受験しましたが,結果は不合格でした。数学の成績は優秀でしたが、現代語、動物、植物が合格点に達していなかったためだったそうです。しかし翌年には合格し,スイス連邦工科大学で数学と物理学を学ぶことになったそうです。こんな不合格体験が20世紀を代表する天才物理学者になる原動力の一つになったかも知れません。
また、大数学者の中にも若い頃は数学が決して得意ではなかったのに、その気持ちを原動力に一流の数学者になった人も少なくないことが、そうした人の伝記を読んでみると分かります。 人生の中では、常に何が起こるか分からない側面があります。原因と結果が単純ではないことが起こるのです。もっとも、幸運をつかみ取る能力は大切です。その力をセレンディピティといいます。
私はみなさんに勇気を持って将来に立ち向かってほしいと思っています。何が起こるかはっきりは分からないからこそ、普段は懸命に努力を続けていることが大切なのです。特色化選抜入試の廃止といったことから、ずいぶん離れて先へ行ってしまったようですが、少しは勇気がわきましたでしょうか。