アメリカでは、オバマ大統領が再選されましたが、その根底には、「小さな政府」「自由市場」とか、「自己責任」といった方向が選択されなかったということだとかんがえられます。近年、「勝ち組・負け組」という言葉や二極化、格差拡大、そしてディバイドといった言葉をしばしば見聞きします。アメリカにおいても「格差」が急速に広がりつつあり、そのことが、ミドルクラスの安全と安定性を欠く恐れがあると、社会問題となっています。
昔から企業の浮沈や貧富の差などはありましたが、バブル経済期までは社会全体に将来への希望や中流意識が未だ存在していたとおもいます。70年代には「1億総中流」という言葉もはやりました。しかし、バブル崩壊以降は生活水準における格差が拡大し、いわば中流がなくなり上と下に分かれるという二極化が進行しているといわれています。
「勝ち組・負け組」という言葉も、深く考えることなく、流行語のように使用されています。また、正規雇用と非正規雇用との間の格差の是正が叫ばれてもいっこうに減少しません。この二極化にはどんな問題があるのでしょうか。おそらく、収入などの量的格差がステイタスの差や心理的な差につながっていることにあるのだろうと思われます。つまり勝ち組は将来の見通しを立てられるが、負け組の将来は不安定であり、そのために仕事や人生に対する意欲を持ちにくくなっていることが問題なのでしょう。
先般、政府は消費税の増税を決めました。現在5%である税率を、2014年4月に8%に、15年10月に10%に引き上げるといいます。歳出の中で特に重要なのは、社会保障費ですが、社会保障制度を抜本的に見直さない限り、際限なく増税が必要になります。社会保障は憲法上の要請ですから福祉国家として当然ですが、どこまで国家や公共団体が関与するのか、しなければならないのかは大変難しい問題です。政治家はこの点でもっと深く議論してほしいと思います。