小学校が義務教育であるのに、幼稚園が義務教育となっていないのはどうしてだろうか。難しい問題であるが、この問題を考えるときには、いわゆる、義務教育が「教育の義務」なのか、それとも「就学の義務」かの問題について考える必要がある。義務教育が「教育の義務」と考える考え方によると、家庭教育や社会教育なども義務教育の実際の教育活動として認可されることになる。実際、教育義務型の義務教育制度ではホームスクーリングによる教育も社会的に受容されている。「就学義務型」の義務教育制度では学校教育によってのみ義務教育が行なわれることになる。日本においては教育基本法、学校教育法の規定によって、子供を保護する日本国民である保護者の義務については、15歳までの最長9年間は教育段階に応じる一条校に就学させなければならないとされている。すなわち、就学の義務型の義務教育を制度化しているのである。
すなわち日本では学校教育法で学校に就学することを要件としており、学校において授業を受けることをもって就学とされることになる。家庭教育のみでは就学義務を履行したとはみなさない制度である。このことから、私は、小学校以前の幼稚園児については、就学による教育より、家庭や地域の教育力を評価して、家庭や地域の教育力に任せる方が、就学させるよりむしろ教育効果が上がると考えた結果であろうと考えている。
さらに、しばしば指摘される理由としては、義務教育化すれば、幼稚園と保育園との整合性の問題を解決しなければならず、これは容易ではない。また、国家の財源の問題が生じることも避けられない。こうした指摘は当然と考えられる。現実的にはむしろそんな理由で、義務教育化していないのかも知れない。また、一方で、幼稚園から義務教育化すべきであるという意見もあるが、まだ少数意見であり、私も幼稚園児は義務として就学させるより、家庭や地域で教育する方が適していると思われる。