「国際バカロレア」という言葉を聞いたことがありますか。国際バカロレアというのは、大学入学資格を付与する国際的な仕組みです。 この国際バカロレアは、望ましい学習者像として探求心など10項目の性質をリストしています。その10項目をまとめる次のようになります。
(1)研究者のマインドを持ち、(2)読書家であり知識が豊富で多面的な見方ができ、(3)答えがないような問題に対しても熱心に考え、(4)よい人間関係をつくりことができ、日本語と英語を基本に、コミュニケーション能力が高く、表現力と建設的な討論ができ、(5)責任のある行動ができ、(6)様々な価値観の人や自分とは異質の人を受け入れることができ、(7)特に弱いものにたいして慈しみの心を持ち、(8)フロンティアとして新たなことに挑戦する気概を持ち、(9)バランス感覚に優れ、従って判断力に優れ、(10)自分を客観的に見ることができるため、「君子は豹変す」の諺のように日々進歩する人。
この中で、私は特に8番目の「挑戦する人」(Risk-takers)という項目が大切だと思っています。 21世紀に入って、日本の若者の安定志向が強まっていると言われています。安定志向とは、新しいことに挑戦してリスクを取ろうとしないで、最も安定した人生を選ぼうとする志向性を言います。冒険することよりも、平穏無事な人生を望んでいるのです。 こうした傾向は、最近の経済状況や雇用の状況から私も理解ができないわけではないのですが、その状況を破るためにも、自分でリスクを取る人になってもらいたいと思うのです。 安定志向の強まりの一つの傾向として、海外へ行く若者の減少があげられます。海外留学の希望者の減少はもちろん、観光旅行にも出かけない。また、2000年以降の種々の調査から、若い女性の「専業主婦志向」が強まっていることが判明しているそうです。 自分で起業するなどリスクが大きすぎるか、またはうまくいったとしてもせいぜい「寅さん映画」の「たこ社長止まり」という気持ちが大きいためと思われます。 リスクテイカーになろうという発想自体がほとんど起きないのが現実です。日本経済の長所とも言われた「終身雇用」や「年功序列の賃金制度」は既に崩壊していると言っていいでしょう。 一方、「新卒一括採用」はまだ幅をきかせていて、大学生も3年生の秋ぐらいから勉強どころではなくなり、大変な労力をつかって「就活」を余儀なくされています。大手企業の正社員になれるチャンスは、このときたった1回しかないと思っているからです。しかし、この悪癖もやがて消滅していくと思います。既にその傾向は一部の企業で始まっています。日本に本当に必要なのは、リスクテイカーの精神だと思われます。リスクに対して、立ち向かうとき、ワクワクした気持ちになれることがそのための条件だと思います。