4月分給与支払いより、また社会保険料が変更されて、給与より天引きする保険料が上がった。保険料が上がり続けている。会社の負担分も本人負担と同額であるから、給与の昇給は、保険料の増額で打ち消されてしまう。
国民年金保険の未納率は40%くらいだそうだ。それも貧困等のため負担を免除されている人を除いた率だ。全て、取りやすいというだけの理由でサラリーマンの給与から天引きされている。問題とされても大きな運動とすることがないために、この制度が変更される気配はない。サラリーマンを愚民としてみる政策である。
ここで私がよく思い出す言葉がある。森鴎外の、短編『最後の一句』にでてくる極めて印象的なことばだ。
江戸時代のこと。はっきりしない罪を申し立てられて死罪を言い渡された父親のために、その16歳になる長女の「いち」が幼い弟と妹を引き連れて奉行所に直訴に参上する。自分たちが身代わりになるから、その代わりに父親を助けてほしいと願い出るシーンだ。
『「お前の申し立てにはうそはあるまいな。もし少しでも申した事に間違いがあって、人に教えられたり、相談をしたりしたのなら、今すぐに申せ。隠して申さぬと、そこに並べてある道具で、誠の事を申すまで責めさせるぞ。」佐佐は責め道具のある方角を指さした。 いちはさされた方角を一目見て、少しもたゆたわずに、「いえ、申した事に間違いはございません。」と言い放った。その目は冷ややかで、そのことばは徐(しず)かであった。 「そんなら今一つお前に聞くが、身代わりをお聞き届けになると、お前たちはすぐに殺されるぞよ。父の顔を見ることはできぬが、それでもいいか。」 「よろしゅうございます」と、同じような、冷ややかな調子で答えたが、少し間を置いて、何か心に浮かんだらしく、「お上の事には間違いはございますまいから」と言い足した。』
すごいシーンですね。いっぺん聞いたら忘れられない。
しかし、今やお上の信頼は地に落ちた。民間同士の間ではかなり高い倫理観が支配していて我々はその倫理観に従って行動している。しかし、国が民に対する倫理観は極めて低いか、ほとんど全くないのと考えないといけない。我々もそのように行動しなければならない。国家間の倫理観はさらに低いからこまる。