(昨日ブログの続き)ある貧乏な男が持っているラジオは、電源のスイッチを入れると、しばらく大きなノイズが出るのですが、やがて正常に受信できるようになります。毎回、電源を入れる度に同様な現象が起きるのですが、その貧乏な男はそれが我慢できないけれど修理するお金がないので、その修理をファインマン少年にさせることになります。 その頃のラジオは、数本の真空管が使われていたのですが、検波にも増幅にも同じ212か、または212-Aという名称の真空管が使用されていたと書いてあります。その状況でファインマン少年は簡単にその修理に成功します。なるほどと思わせる方法です。どう推理してそしてどのような処置をして改善したのでしょうか?
ファインマンさんの推理は次のようなものでした。 まず、電源スイッチを入れた後しばらく正しく受信しないで雑音が出るのは、真空管のフィラメントが熱くなって熱電子放出が始まるまでにかかる時間が真空管によって異なり、スピーカーに近い終段の真空管の方がアンテナに近い初段の真空管より先に働き始めてしまい、その時点ではまだ初段の真空管が機能しておらず、大きな音の雑音が出てしまったと考えられます。 そこでファインマン少年は、スピーカーに近い後段の真空管とアンテナに近い初段の真空管を差し替えただけで、解決したのです。そうすれば、電源を入れたとき、スピーカーを鳴らす真空管が機能し始める前に、検波等の機能を果たす初段の真空管が働き始めて、電源入れた当初の雑音がきれいになくなってしまったと考えられます。
ラジオに212のような真空管が何本か使用されたのは、大正から昭和初期のラジオの特性だろうと思われます。昭和も30年代になる頃には、真空管の種類が機能別に開発されて、検波と増幅では別の真空管が使用されるようになりましたから、このような真空管の差し替えはできなくなったと考えられます。
その後の少年時代のファインマン君は、三角比や三角関数についての定理などを学校で学ぶ5年も6年も前に独自に定理として証明して、サイン、コサインのマークも自分で作っていました。サインの記号はギリシャ文字のシグマ(Σ)の上の棒をルート(√)のように長く伸ばしたもので、アークサインは、そのΣを鏡の映したような逆向きにしたものだったそうです。すごいですね。