特徴的なことは、「数学III」に多くの内容が追加されて、単位数も現行の3単位から5単位に増加されている。旧課程で扱われていた「複素数平面」および「曲線の長さ」が復活し、現行課程「数学C」の「式と曲線」が数Ⅲに入れられる。 その他、詳細にみると、いくつか制限が廃止されて、指導内容に追加されるポイントがある。
「ヘロンの公式」が指導内容となる。
二重根号をはずす計算が指導内容として復活する。
常用対数は必ず扱う。
三角関数の「和積・積和」の公式が加わる。
理系志望者の負担増
来年度の指導要領の改訂によっては、文系学部志望者の負担はほとんど変化がないと考えられる。しかし、現行の「数学C」の内容の一部が「数学B」と「数学Ⅲ」などに移行するために、理系学部志望者は「数学C」のほぼ全範囲を全員が学習することになるだろう。実質的に学習範囲が増加し、理系学部受験生の受験対策はかなり負担が増えると考えられる。
大きな変革は、複素平面の復活と行列の削除である
「複素数平面」が復活する。この単元も行列と同様、大学への橋渡し的な単元である。複素平面については、「ド・モアブルの定理」も学習することになる。「平面図形への応用」も学習内容に加えられる。「数学C」の「行列」が削除されることになっている。(行列の一部は、「数学活用」に移行されることになっている)これは大きな変更点である。「行列」も高校数学に入ったり出たり、しばしば変更される単元である。高校で学ばないと、大学ではじめて「線形代数」を学ぶことになるが、多くの学生にとっては、線形代数はむずかしく感じるであろう。とくに、「固有値や固有ベクトルって何」という学生が増えると思われる。行列は、非可換な代数を始めて学ぶ機会であり。一次変換への応用がおもしろくまた広いので、これがなくなることは少々心残りである。
また、三角関数の和積変換と積和変換の公式まで学ぶことになるが、暗記しようとすると覚えきれずに、ますます数学嫌いを増加させないか心配である。公式を暗記しないで、和積や積和変換が必要になったときに、加法定理から計算で公式を作る方が実戦的だと思われる。その方法を指導すべきである。