昨日、岩波ジュニア新書をまとめて数冊買ってきた。まだ全部は読んでいないが、その中で素晴らしい本に出会った。中学生や高校生に是非読んで欲しい本だ。
真継伸彦著「青春とはなにか」である。副題に「友だち・スポーツ・読書」とあるが、この本は、本格的な読書案内として読むことができる。この一冊で取り上げられている日本と世界の名著の数は相当数に上り、しかもその「要約」と「取り上げ方」が素晴らしいのだ。漱石の「こころ」やドストエフスキーの「罪と罰」の要約、ロマンロランの「見せられたる魂」の要約など素晴らしい。一時期、そうした名作のアブストラクトが流行した時期があったが、ほとんど稚拙な要約といわざるを得ないものばかりであった。要約が第一に素晴らしいということは読み方が極めて的確であり、隅々まで公平に注意が行き届いていることを意味する。
また、筆者自らの青少年期を振り返って、学ぶことや生きることの意味を分かりやすく披瀝してくれていることに感動する。こうした部分を読むと、まさに漱石の「こころ」の「先生の遺書」を思い出すのだ。とくに次の先生の言葉を。 「あなたが無遠慮に、私の腹の中から、ある生きたものをつらまえようと言う決心を見せたからです。私の心臓を断ち割って、暖かく流れる血潮をすすろうとしたからです」これが、「こころ」で「先生」が主人公の青年に自分の過去全てを語る動機なのだが、真継先生は、同じことを若い世代にしてあげようとしているのだ。
この本で真継先生が上げている書名のリストを作ると、中学生と高校生の時代にテレビを見る時間とゲームをする時間とケイタイをいじっている時間を全部読書に費やしてもムリではないかというくらいである。岩波ジュニア新書はいま、700号くらいになっているから、その100号目のこの本はずいぶん以前に発行されたものだ。
すぐれた「要約」をつくるためには、相当な読解力が必要である。要約を作らせればその生徒の日本語力がよく分かるし、作文練習としても最適ではないだろうか。小論文指導や作文指導では、まずぼくも要約をさせてみよう。字数をいろいろ指定してやってみよう。素晴らしい小論文や作文の指導方法を見つけたと思った。感想文でなくあくまで「要約」である。