進路指導と受験指導をしていて、もっとも困難を感じる生徒は、自分のことがまるで分かっていない生徒だ。自分を自己分析することを習慣として全く行っていないか、または意識してそれを拒否しているのか、そのこともはっきりしない。しかし、そうした傾向は進路指導の上だけで問題となるとは限られない。実際、メタ認知能力の育成は、教育において特定の教科教育を越えた重要な課題のひとつとなっているそうだ。メタ認知能力を上げることが極めて困難な生徒がいることはぼくらが日々経験することだ。こうした人が成人となって共同体の一員として社会生活を共にすることになると、面倒なトラブルが起こりえることは容易に想像できる。また、そうした生徒は、普段の我々との対話から、親とのコミュニケーションがほとんど無いのではないかと想像されるのだ。
「話せば分かる」とはいえないことは、養老孟司先生から教わったが、それでもぼくらは、話せば分かることに期待して普段は教師の生活を送っている。それが根底から失敗し虚無的な感覚に陥るのだ。
そこでぼくは、まず当塾の正社員だけでも、きちんと自己分析をさせてみようと、分析表を作成して、配布した。これでそれそれの先生のメタ認知能力の程度が分かるだろう。この土曜日が提出期限となっている。
ぼく自身はどうかと、やや諧謔的な言い方になるが、能力等についてはかなり客観的に評価しているつもりだ。全くできていないのは、食べることとその結果である自分の体重についてである。ここ数ヶ月間(ひょっとしたら1年間くらい)、体重計に乗ったことがない。自分の体重を知らない。しかし、このことをもって、自分がメタ認知能力が全く不足しているとはいわないであろう。それをよいことにしている。少なくとも、「メタボ」であることは重々認知している。