齋藤孝先生の「話し上手 聞き上手(ちくまプリマー新書)」という本を読んだ。この本の中で、コミュニケーション力を上げる為の授業として「圧迫面接」を学生にさせる方法が紹介されている。齋藤先生は、独創的な種々の授業法を開発され紹介されていてたいへん勉強になる。「圧迫面接」では、学生を面接官と応募者の二つの役割にわけて、実際にやってみるのだ。この方法は面接を受ける練習になるし、質問力のトレーニングになるという。
「圧迫面接」と聞いてぼくがすぐに思い出すのはずいぶん以前のぼくの生徒だ。彼は、今はつぶれてない「山一証券」の面接を受けて帰ってきた時、ひどい「圧迫面接」を受けたと言って腹を立てていた。やがて山一証券は崩壊したから、あのような面接をするから会社がつぶれるのだと妙に納得したことを覚えている。
その当時は、圧迫面接自体はしばしば行われていたのだろう。ことにバブル経済崩壊後の就職氷河期において、企業が強い立場を背景に、新卒採用や中途採用において恒常的に行われていたようだ。それが、1994~1995年ごろには社会問題化したことがあった。 現在では、そうした面接を企業が行えば、インターネットを通じて情報がどんどん流れて、応募者が激減するなど、環境的にできなくなっている。
圧迫面接について調べると、「回答そのものより、感情的になることなく臨機応変に迅速かつ冷静な回答をする態度が評価される」などと説明されている。
これが、コミュニケーション力アップに役立つのだと齋藤先生は言われる。圧迫面接が悪者扱いされると、それを授業法に取りれることなど、想定しないのが普通であろう。齋藤先生は結構マゾな部分があるようだ。人が徹底的に追い込まれ、パニックになる様子を見ることほど楽しいことはないと、述べておられる。
しかし、このロールプレイングが、コミュニケーション力を上げる為の練習になるというのは、目から鱗の感じがした。ぼくも、小論文指導の練習の一環として、面接練習を行っている。面接官役としては、優しすぎる人や、コミュニケーション力が極めて高い人は不的確だと思っている。コミュニケーション力が高くても、面接試験中は、徹底的に低くしていることができればよいことは当然だ。コミュニケーション力が高い人が、面接を行うと、彼らは基本的に親切だから、受験生(応募者)の本質が見えないのだ。