ぼくの小論文の指導も、もう10年を超えた。その中で最近少なくないと感じるのが、医療看護系への志望だ。看護師以外のリハビリテーション関係の学部志望もたいへん人気が高い。こうした学部からは種々の資格が取得できることが魅力なのだ。時代を反映しているといえる。 なかでも岐阜大医学部の看護学科や、県立看護大、中部学院大学のリハビリテーション学科などへの志望が多い。
かって、その入試小論で、河合隼雄先生の著作から出題が続いたことがあった。「小さな博物誌」や「こころの処方箋」などすばらしいエッセイが多いからだ。これらのエッセイは、大学入試の小論文課題だけでなく、全国の私立中学の入試問題にも採用されている。
河合隼雄先生は、臨床心理学の専門家だ。実際にカウンセリングという仕事をしながら、その仕事で得た経験から、たくさんの著作を残された。河合先生が若い頃「ユング研究所」へ留学され、そこで既に大家であったユング先生から指導を受けたときの思い出「友達を作る」というエッセイは、平成18年に県立看護大で出題された。これは我々が常識的に使っている「友達を作る」という表現が嫌いだと述べている。「ユング先生との対話の中でそう感じた理由を800字以内で述べよ」という問題であった。
ぼくはやや苦労して以下のような答案例を書いた。筆者は「友達を作る」という表現を嫌いだと言う。作るというと、身勝手な感じになるからだ。自分を全く変えないで相手にだけ一方的に自分に合わせてくれることを期待している。こうした意味を「友達を作る」という表現は含んでいる
(2)へ続く