1,評論文問題の得点力UPの秘訣
かって、神戸市外国語大学で、「世界」(岩波書店2001年2月号)に掲載された文章--「『よい』『わるい』の二分法を超えて」という二分法からの脱却を主張する文章が、小論文の試験(2004年)に出題されたことがある。
この小論文の課題文の主張は、思考法としての「二分法」からの解放である。極めて斬新な主張であったため、私は、その文章を今でも明瞭に記憶している。 しかしながらこの主張にもかかわらず、入試国語に出題される評論文ではその後も、もっぱら二項対立的な論法で成立した文章が出題されており、この傾向は全く変わっていない。「二分法」とか「二項対立」と呼ばれる論法によって書かれた文章が評論文に出題される傾向は、中学校入試、高校入試そして大学入試と続き、説明文と評論文問題の王道のようだ。前記の「『よい』『わるい』の二分法を超えて」という岩波書店の雑誌「世界」に掲載された文章の影響は、入試評論文に関してはほとんど無かった。
入試国語の評論文で、二項対立によって書かれた文章が出題される傾向が延々と続いている理由は、二項対立的思考法が、もっとも論理的と考えられるためであろう。その点で、国語の入試問題に詳しい石原千秋氏は、「秘伝 大学受験の国語力」という著作の中で以下のように指摘している。その部分を引用する。 『「論理的」といわれる思考法は、単純化すれば<善/悪>という根源的な二項対立によって世界が成り立っているというと考えるような世界観によっている。これは、特にキリスト教文化圏に特徴的な思考方法だが、近代日本でもこういう思考法以外の思考法は、極端に言えば「論理的」とは見なされないようなところがある。』
このような出題状況から、入試国語の成績を上げるには、評論文においては上記の「二項対立思考法」に慣れて、二項対立に図式化する「二項対立整理能力」を養うことであるということができるだろう。
2,物語文問題の得点力UPの秘訣
次に小説文の読解問題で高得点をコンスタントに安定的に得点する方法についても上記の石原千秋氏の「大学受験の国語」を参考に考えてみよう。少々そこから引用する。 「技術的には先に選択肢を読み、選択肢に示されたキーワードを「物語文」に織り込むことである。さらにそういう訓練を積み重ねて、学校空間で好まれる「物語文」の種類(パターン)を身につけてしまうことである。学校空間で好まれる「物語文」とは、道徳的で、主人公が成長し、予定調和的な(つまり、悲劇的でない)物語である。 これを意識しながら繰り返し訓練すれば、小説問題の得点は高いところで安定するはずである。」と主張している。
さて、塾生の皆さんは、センター試験国語の過去問で十分練習することで、安定的な高得点がマークできるように努力してほしい。