生徒は皆個性が違います。多くの生徒に会いますと、関心を持っていることや、大事だと思っていることがこれほどまでに違うのかと戸惑うこともあります。この違いが大きいということが、教育を難しくしている原因です。学力の幅の大きさや好きな教科の違いも個性の違いの一つの態様と考えることができます。これも困難性の基です。社会が好きな生徒は、歴史や法律などに対する関心が大きく、かつ一番重要だと思っています。一方で、数学や近現代の物理による自然認識のすごさに魅了されている人もいて、一律に教育することは容易ではありません。
しかし、この個性の違いが極めて大きいという事実は、私たちにとって最もたのしいことだと感じています。私たち教師が生徒のことが理解できるためには、私たち自身にも同様な側面が自分の中にもなければなりません。全く自分にないことに対しては、生徒を理解することができないことになるからです。だから、教師自ら自分を知る機会でもあります。
全日型(通学型)の通信制高校において、良い教育をするには、生徒のことが分かることが前提です。だから教師自らにとって、自分を見つめるいい機会になるのです。通信制高校も個性豊かな生徒が集合することは、全日制高校と変わりません。いや、それ以上かも知れません。生徒に教えられることが少なくないのです。違いが最も顕著なのは、興味の対象です。どんなことに興味を持つかにつていは、ほとんど共通範囲がない位違っています。自分が興味を持っていることに「もっと興味を持ってよ」とは言えません。だから、画一的な指導は、限界があります。個別による対話重視の指導が重要になります。
生徒にとって興味を感じていない対象に、教師が関心を持たせるという、容易ではないことをやろうということが教育の目的ですから、教師は苦労するのです。しかし、通信制高校なら、生徒の個性を見つけ、伸ばせるところに集中して伸ばすことが、他の全日制や定時制より適した学校制度であるように思います。つまり、個別指導を多用することがどうしても必要になります。これほどやりがいがあり、楽しいことはないと思っています。