インターネットのユーチューブで、森毅先生の「数学が好きになるには」という講演を聴きました。森先生は既になくなっていますが、NHK教育の人間大学で講義されたときの録画です。(http://www.youtube.com/results?search_query=%E6%A3%AE%E6%AF%85)だから、大学生を対象とする話なのですが、とてもおもしろい。
関西弁でよどむことなく喋り、次から次へ話題が途切れることなく続きます。この先生は講演の名手です。特に受けようとしている訳でもないのに、引き込まれる話し方です。話し方がおもしろいだけでなく、話の内容がユニークでとっても勉強になります。 数学の専門書でなく、数学や教育に関係するエッセイなどもたくさん書かれているので、読んでみようと思っています。
その講演では、「囲碁の話」や「母が息子を諭す話」、あるいは「友達7人で割勘する話」など人間大学の講義録とは思えない内容です。その中で僕が一番おもしろいと感じたのは、お母さんが、小学生の子どもとの対話です。
いくつか、思い出して書いてみましょう。 「小学校でもね、高学年になると算数はとても難しくなるのよ。中学の数学はもっと難しくて大変よ」などと言わないでね。「お母さんはね、昔、算数大得意だったの。数学も得意で数学の天才などと言われたのよ。」などと嘘でいいから言っておいて、お子さんと一緒に算数の問題をやって、お子さんだけ解けて自分が解けなかったら、「あらすごい。昔の私みたいね」と言ってあげる。
「今、僕は学校で連立方程式をやらされているけど、おじさんやまわりの大人に最近連立方程式を解いたことあるの?ときいてみたら、誰もいない」 そんなときの答え方がおもしろい。「大人になったら連立方程式を解かなくなるから、今のうちに解いといたほうが得だね」と答える話。
「こんなことをして何の役に立つの?と言われると確かにちょっとつらいのですがね」と前置きして「二次方程式など何の役に立つの?」に対しては、森先生もまじめに答えていた。「二次方程式が無かったら、虚数が生まれなかったかも知れません。こんな幽霊みたいな数と思うかも知れませんが、虚数というものを考えると言うことはかなり意味がありますよね。例えば、ロマン派の音楽だけが音楽と思っているよりは、12音階の現代音楽も音楽と思った方がいいのと同じですね。」と音楽や絵画を例に説明されていた。興味と関心の非常に広い先生だから言えることです。